年齢をかさねる贅沢 ヴェロニク ヴィエン 岸本 葉子 光文社 2003-04-22 |
21歳の時、ふと立ち寄った手相占いの方に 「あなたは大器晩成だから、56歳くらいの時が一番花開くよ」 と言われて、目からウロコが落ちて、未来がぱあっと開けた時の記憶が今でも鮮明に蘇ります
若さがもてはやされる日本では、21歳といえば 「いまが花」 と言われる年齢。
いますぐに花を咲かせなくては、という焦りの気持ちもどこかに抱えた21歳で、この言葉を素直に聞き入れることができたのは、いま思うととても不思議ですが、当時、憑き物が落ちたようにすっと納得したのを憶えています。
それから7年後にこの本に出会いました。
パリ生まれで、ニューヨークを拠点とする人気ライターヴェロニク=ヴィエンによるこの素晴らしいフォトエッセイは、年齢を重ねていくことの利点、楽しみ方、発想の転換を提案した、全米で50万部を越えるベストセラーになった本です。岸本葉子さんの訳がまたとても素敵。
「まず、目の美しさに気づきましょう。柔らかなオーガンザのような、皺に包まれているからこそ、瞳はずっと生き生きと輝いて見えるのです。」(本文より)
「『私も40歳、50歳、60歳になりたい』下の世代に、そう思わせる大人になりましょう。人生は年齢をかさねるにつれ、楽しく、スマートに、かつ真摯になっていくことを、身をもって示すのです」(本文より)
ページをめくればめくるほど、年齢をかさねていくことに対するネガティブな思い込みを手放していくことができ、気がつくと、今の自分 ー刻々と年齢を重ねている自分、人生の可笑しさもほろ苦さもわかり始めた自分ー の年齢を、誇らしく感じることができるようになっています。
ハワイでは、年長者はクプナといい、皆から敬われ、大切に扱われる存在です。
でもそれはきっと、ただ歳をとっているからという理由ではなく、自分のストーリーをALOHAと共に生き、自然と共に歩む生き方を身につけ、それを若い人にシェアできる智慧と大きなALOHAにまで高めたからこその、尊敬ではないかしら、と思います。
「鏡をみて、『この人は、私がなりたいと思っている60歳の自分の、若かりし頃なのだ』と考えてみましょう」(本文より)
柔らかな皺に縁取られた、少女のような生き生きした、ちょっといたずらっ子のような瞳
皺の中にたくさんのALOHAを刻んで、たくさんの子どもたちをマッサージしてきた手
日に透けるとキラキラ光って、銀色のつむいだばかりのシルクのように見える髪
思わず話しかけたくなるALOHAなオーラ・・・
そんな自分をイメージして、時間を越えて、未来の自分に今何をしたらいいかを問いかけてみます。
すると心が豊かに落ち着いて、するべきことが見えてきます。
自分の未来のこと、これからどんな風に年齢をかさねていこうかと思いを巡らせるときに、読んで頂きたい1冊です。
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