心と身体をつなぐトラウマセラピー

心と身体をつなぐトラウマ・セラピー 心と身体をつなぐトラウマ・セラピー
ピーター リヴァイン Peter A. Levine雲母書房 2008-02
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久しぶりに、心と身体の奥まで共鳴した本です。

様々な事件や災害が起こり続けているこの世界で、トラウマという言葉がブームになり、心理学的な側面、個人的な体験や記憶にフォーカスされてきた従来のトラウマ療法のイメージを覆す本書は、特定の大きな事件や事故にあった人だけではなく、全ての人の幸福、子どもたちの教育、環境問題、平和への糸口につながる、大きな示唆を含んでいます。

様々な臨床のケースの中で、ピーター・リバイン博士は、トラウマを、爬虫類脳=延髄が司る「いまこの瞬間」を生きるための反応と、新しい脳=大脳新皮質の司る思考の狭間で、適宜発散・解放されるべきエネルギーが行き場を失い、からだの中に残ってしまっているもの、と捉えています。

そのエネルギーを、博士は、男女が愛し合っていて今まさに絶頂に、という時に、強制的に、そのエネルギーを停められたようなもの、と例えていますが(笑)、生き物として自然に いま を生きている動物には、トラウマが起きないことを例に、更に頭や感情・あやふやな記憶を使って解決しようとするのではなく、身体の中に残っているエネルギーが引き起こす「反応」に意識を向け、動物的な身体感覚(フェルトセンス)を感じてつながること、そして出ていこうとするエネルギーを押さえつけずに解放することこそ、鍵だということを発見するのです。

そして、さらに、広い視点にたつと、戦争や社会的な事件は、その構成員全員に深いトラウマを引き起こし、その行き場を失ったエネルギーが、世代を超えて更なる緊張を生み出し、そ誤った発散の形として、平和と逆方向の出来事を作り出す(再現する)のだとしています。

様々な部族の中で行われてきた呪術医やヒーラーによる儀式は、その魂と身体、ひいては世界と自分が乖離した状態を、歌や呪術により元に戻すためのものであったことにも触れており、それはちょうどハワイでいうとホ・オポノポノにあたります。ロミも、その過程の一つであることから、深く深く腑に落ちました。

「(フェルトセンスを使った)トラウマとの再交渉というものが例外なく神話的、詩的、英雄的な性質を持つプロセス」

(トラウマのエネルギーの解放による深い変容が起こると) 「この地球が危険な場所になることはあるでしょうが、過度の警戒を生み出す絶え間ない恐怖 (中略) に悩まされることはもうありません」

「不安ではなく信頼がすべてをの体験領域を形成します」(本文より)

世界と信頼と愛でつながりなおし、動物的側面と、スピリチュアリティ、知性を「統合」してフルに生きる・・・人類の究極の夢は、身体=もっとも身近な自然とつながることにあるとする博士の、人間に対する限りない愛の視点と、ご自身もセラピストである藤原千枝子さんの訳が、とても素敵です。

火山や大自然とつながったハワイではなく、日本の、この自宅で出来るロミは、とても些細な行為ですが、ご縁あっていらしてくださる方の中にある、動物的な、豊かなエネルギーに再アクセスして、豊かに生きるためのサポートができるようなロミが出来たら・・・と、思わずにはいられません。

この世界に暮らすことに生き辛さを感じる全ての「正常な」人、セラピストの方、子どもに関わる全ての方にオススメしたい1冊です。

 

 

 

 

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