観光コースでないハワイ―「楽園」のもうひとつの姿

観光コースでないハワイ―「楽園」のもうひとつの姿 観光コースでないハワイ―「楽園」のもうひとつの姿
高橋 真樹

高文研 2011-06
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久しぶりのハワイもののご紹介です。

ハワイに行ったことがある人で、ハワイが大好きにならない人はいないと思いますが、そんな地上の楽園ハワイのもう一つの顔を紹介した本はとても少ないと思います。

本書はハワイの 「もう一つの顔」 の現状だけではなく、その現状をALOHAスピリットをもって、良い方向へ変えていこうとする人々の活動を丁寧にとりあげて紹介してくれる、貴重な 「本当のハワイ」 のガイドブックです。

私のクム、ディェーン・シルバは、ネイティブハワイアンであり、以前優れたリサーチャーとしてハワイの自然や遺伝子組み換えについての調査を行っていたこともあるため、ロミロミの話やハワイの文化についての話の中で、ハワイがハオレ(白人)にどれだけ騙されて土地を取り上げられてきたかという悲しい歴史やハワイの文化がどのように抑圧されてきているか、そして、今ハワイの植物がどれだけ遺伝子組み換えの危機にさらされているかを伝えてくれます。

いつもは陽気で穏やかなクムの顔も、そうしたストーリーを語る時は、静かな口調の中にやりきれなさ、怒り、哀しみがにじみ出ていて、私たちも本当に心が痛みます。

ハワイは楽園であると同時に、大企業による開発大国であり、モンサント社による大規模実験農場が散在する島であり、沖縄と同じく基地の島です。

また、多くのネイティブの文化の人々と同じように、聖地に基地を立てられ、軍の廃棄物を捨てられ、魂の畑を荒らされ、ハワイ語すら禁止された歴史や、誰のものでもなかった土地を島外のお金持ちに私有されて、貧困やホームレスの生活を余儀なくされる人々が大勢いる現状を抱えた島でもあります。

でも、ALOHAスピリットと誇りは脈脈と生き続けていて、大地や人同士の絆をつなぎなおすことで、ハワイを元の自然と人がALOHAでつながった真の楽園に戻すために、強い信念をもって活動している人たちがたくさんいます。

この本では、そんな人々の活動が丁寧に紹介されていて、ハワイを愛する人たちだけではなく、平和で調和的な社会を目指す全ての人々にとって、「そうか、そんなやり方があったのか」、「そういう考えで平和をつくっていこうとしているのか」 「こんなツーリズムを実践できるのか」 と目からウロコのヒントがたくさん紹介されています。

私が特に感動したのは、沖縄の普天間問題でゆれた2010年に、ハワイでも大規模な 「基地反対」 のデモが開催された話。「(基地は)ここにも、あそこにも、どこにもいらない」 「ジュゴンを守れ!」 などのプラカードをもって、遠くハワイの地でも、若者達が 「基地はいらない」 という思いで行動している・・・。「沖縄から移転してくれれば」 「日本のどこかの県で痛み分けをすべき」 「同じアメリカなのだからグアムでいいじゃないか」 といった狭い視野ではなく、「この大地に基地はいらない」 と堂々と謳い上げるハワイの活動家の考えに、もろ手を挙げて賛成! 涙が出ました。

ハワイの独立を目指すポカ・ラエヌイの話として紹介されている 「みんなが共存していくことが一番大切なのだから、民族的に誰がハワイアンかという議論は、あまり重要ではない。・・・作りたいのは、現代に合った民主国家なんだ」 (本文より)という言葉に、たった一つの大地に、ALOHAをもって生きる地球人としての誇りと、大切なエッセンスが詰まっている気がしました。

是非みなさんに読んでいただきたい本です。

ハワイに行ったら是非こうした活動にも参加してみてください。ハワイがもっと身近に感じられ、またハワイがもっと身近に寄り添ってくれることと思います。

著者の高橋さん、すてきな贈り物をありがとう!

 

 

 

 

 

 

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